聴覚障害が見えた「淋しいのはアンタだけじゃない」感想|わかりすぎてつらいです

淋しいのはアンタだけじゃない感想

どうも、中途失聴のハルクです。

「淋しいのはアンタだけじゃない」全3巻を読みました。

全編通して一番感じたのは「わかりすぎてつらい」ということ。

高校生のときに中途失聴となり、一日中鳴りつづける耳鳴りに学校に行けずベッドで頭をかきむしっていたことを思い出しました。

あのころの自分がこの漫画に出会うことができていたら、悩んでいるのは自分だけじゃないと前向きにがんばれていたのかな。そんなことを思ってしまうほど真摯に聴覚障害と人に向き合い、悩み葛藤しながら書かれた漫画です。

漫画ならではの表現を使って聴覚障害者の聞こえの見える化をとことん追求し、多くの当事者、研究者を訪ねて聴覚障害の悩み、生活、現状を丁寧にまとめてくれていました。

健聴者の人はもちろん、私と同じ聴覚障害の人にもぜひ読んでみてほしい作品です。いろんな立場の人へのメッセージという形で、この漫画への思いを書いてみました。

私と同じ聴覚障害者の方へ

私は聴覚障害者です。

高校生の頃に中途失聴となり、大学生になってから補聴器をつけ障害者手帳を取り手話を覚えました。そして2017年に人工内耳の手術をして、現在に至ります。

そんな私が「淋しいのはアンタだけじゃない」を読んで感じたのは、圧倒的な共感でした。

高校時代ピーという耳鳴りがひどすぎて通学中に車がつっこんできたら楽になれるかなと毎日考えていたこと、わかったフリと作り笑いばかりうまくなって次第に人と関わるのが嫌になっていったこと、学校で話しかけれられることが怖くて休み時間はいつも机につっぷして小さくなっていたこと。

どのページからも共感があふれだしてきて、わかりにくい聴覚障害の内容が漫画として今読めていることがうれしくてたまりませんでした。

中途失聴や耳鳴りで苦しんでいる人、聴覚障害のことをわかってほしい人、すべての人に読んでもらいたいなと思う漫画です。

もちろん共感だけではなく、聴覚障害、とくに耳鳴りについて実際に研究者のもとを訪ねて最新の治療事情を知ることができました。

耳鳴りは耳というより、脳が過剰に働いてしまっていることが原因であると思われることや、耳鳴りの聞こえを脳に流れる鉄分を測定することで他の人にも聞けるようにする取り組みなどあらたにしることが多くありました。

個人的にうれしいかったのが「オーディトリー・ニューロパシー」を取り上げてくれたこと。私もよく似た症状で、聴力が90dBで語音聴力検査が5%と10%しかないんですが、ものすごく静かなところでしたらなぜか人工内耳なしでもなんとか話ができます。

専門書なんてなかなか読み進めることはできないですが、漫画ならあっという間に読み進めてたくさんのヒントを得ることができました。

健聴者の方へ

聴覚障害は外からはわかりにく障害です。

私自身中途失聴する前は、単純に聞こえる音が小さくなっているだけで、みんな手話ができるから話とかはできるんだろうななんて思っていました。

実際はまったく違います。もっともっと深くて、複雑なものでした。

「音としては聞こえるけど、言葉としては聞こえない」

感音性難聴はよくこのように説明されます。言葉にするとたったこれだけのことですが、この言葉の裏になんとも表すことが出来ないいろんな思いがつまっています。

わかってほしい、でもどう言葉にすればわかってもらえるのかわからない。私も試行錯誤しているうちに、いつしかわかってもらえないことを前提に説明するようになりました。

この漫画にはそんな思いを救ってくれるような力があります。読んでいる間、ずっと「そうそう、こんな感じなんだよな!」とうなずいてばかりでした。これから聴覚障害について聞かれたら、この漫画を名刺代わりに渡そうかなと思うほどです笑

身近に聴覚障害者の人がいる人、聴覚障害について知りたい人はぜひ手にとってもらえたらうれしいです。

もちろん漫画にある聴覚障害者が聴覚障害のすべてではありません。それでも必ず新しい発見、気付きがあると信じています。

著者の吉本さん・担当の桜井さんへ

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すばらしいドキュメント漫画をありがとうございます。

吉本さんと桜井さんが聴覚障害について葛藤を抱えながらも、0から一歩一歩進んでいくのを漫画を通して見ていました。

悩みながらも真摯に向き合っていく姿にただただうれしい気持ちがとまりません。言葉があふれてうまく言えませんが、本当にこの漫画を読めてよかったです。

中途失聴となり幾年月、いろいろありましたが「淋しいのはアンタだけじゃない」を読み、これまでのことを思い出し、やっと今の自分を自分として認識できたような気がしています。

「これまでどうしたら聴覚障害のことをわかってもらえるのかな?」と悩んできましたが、やっと一つの答えを得ることができました。

『「淋しいのはアンタだけじゃない」を読んでもらい、それから一緒にたくさん話して考えること』

外からはわかりにくい障害というのは変わりませんが、漫画を手に私も一歩一歩進んでいきたいと思います。

本当にありがとうございました。

淋しいのは私だけじゃない

漫画の最後、「淋しいのはアンタだけじゃない」というタイトルの意味が胸にささりました。

中途失聴になったからこそ、世界でたった一人であるかのようなさびしさ、うらみつらみがわかります。それが誰かにとっての救いになって、少しでもそのさびしさをなくしていくことがでたらいいなと思うのです。

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