どうも、難聴のハルクです。
テレビをつけて、リモコンの「字幕ボタン」を押すとほぼすべての番組で字幕が表示されるようになりました。
10年前と比べると、はるかに便利な時代になったものです。
そして今、番組だけででなくCM(コマーシャル)にも字幕がつくようになっています。
私は中途失聴でいつも字幕付きでテレビを見ているので字幕付きCMを見る機会もありますが、字幕なしの人は目にする機会はまったくないんじゃないでしょうか。
今回はそんな字幕付きCMについて調べてみたことをまとめてみます。
目次
字幕付きCMとは?
あれこれ書く前に、まずは字幕付きCMとはどんなもんなのか見てみましょう。
実際にテレビでも放映している花王株式会社のCMです。
どんな感じかわかったでしょうか?
基本番組についている字幕が、そのままCMにもつくようになったようなものです。放映するテレビ局の機器は同じなので、必然的に同じような見た目の字幕になります。
その他の花王株式会社の字幕付きCMはこちらから見ることができますよ。
なぜ必要なの?
なぜ字幕付きCMが必要になるのか。視聴者側と企業側の視点があります。
視聴者の視点
多くの聴覚障害者は字幕がなければなにを言っているのかわかりません。
私自身字幕がついている番組の内容は100%理解できますが、字幕のないCMの内容はなにを言っているのかわからないので、内容を理解している自信がありません。
また高齢者の人も字幕が必要になることがあります。
日本はすでに高齢者社会へ突入しているので、今後ますます字幕が必要な人はふえるでしょう。
企業の視点
一般社団法人日本補聴器工業会が2015年に行った調査によると「自己申告における難聴者率」は11.3%だそうです。
計算すると約1400万人になります。
平成25年度の内閣府の調査では聴覚障害者の人数は約35万人となっていますが、こちらは障害者手帳の基準に満たない難聴者、高齢者は含みません。
具体的な数はわかりませんが、CMの音声が聞こえにくい、聞こえていない人はそれなりに多くいることがわかります。
そして電通が行った「字幕付きCMに対する評価、効果等に関する調査研究」によると、CMに字幕をつけることで、CM好意度、内容理解度、商品興味関心度、提供企業イメージ上昇度などがアップすることがわかっています。(特に聴覚障害者の評価は高くなっています)
つまりCMに字幕をつけることで、決して少なくない人数に対して商品をアピールすることができるようになるんです。
視聴者、企業、どちらにとってもメリットのある話だということがわかります。
- 視聴者の立場:CMに字幕がついていることで内容がわかる!
- 企業の立場:CMに字幕をつけることで広告効果がアップ!
どのくらい普及してるの?
それでは字幕付きCMは世の中にどのくらい広まっているのでしょうか?
日本民間放送連盟が詳細な資料を出しています。
- よりよい放送のために | 一般社団法人 日本民間放送連盟(ページ下部)
資料によると2017年4月~6月では27事例となっています。その他「字幕付きCM数の変遷」は下のグラフを見てください。
(年別字幕付きCM数)
2010年にTBSドラマ「ハンチョウ」で放送されたパナソニックのCMが日本で初めての字幕付きCMになります。
そこから年々増加し、2016年には1年間で83個のCMに字幕がつくようになっています。関係者の人達の取り組みがわかりますね。
CM全体に占める割合は?
ちゃんとしたデータが見つからなかったのでヤフー知恵袋の投稿を見ると、 2009年には2600種類のCMが放映されたようです。
上限もあるので大きな変動がないと考えて計算してみると、2016年は放送されたCM全体の約3%に字幕がついていたことになります。(正確な数字じゃないです)
地上波が総務省の方針をうけてほぼ100%を達成したことを考えると、ものすごく少ない数になります。どうりであんまり目にしないわけですね(笑)
積極的な企業は?
(企業別字幕付きCM数 2010年~2017年6月)
先ほどの日本民間放送連盟の資料から各企業が出している字幕付きCMの数を調べてみました。
年ごとに載っているので、重複しているCMもあると思いますが、同じ時間帯で同じ企業でも時期によって違う内容になっていることは普通にあると思うので、一つの枠でカウントしています。
グラフに載っている企業は10個以上字幕付きCMを出しているところです。
それ以下は下のようになりました。総計29企業になります。
- 9個 NTTドコモ、大同生命、日清食品ホールディングス
- 8個 清水建設、日本たばこ産業
- 5個 中部電力
- 4個 日本電気、大和ハウス工業、エイベックス・グループ・ホールディングス
- 2個 明治、デジタル放送推進協会
- 1個 トヨタマーケティングジャパン、朝日生命、アートネイチャー、日立グループ、九州電力、八事ハウジング、塩野義製薬
これまで29企業しか行ってないと聞くと、なんだか少ないように見えますが、一度はじめた企業はその後も継続して字幕付きCMを放映しているようです。
特に花王はすべてのCMに字幕をつけています。
花王の字幕CMプロジェクトチームへのインタビュー記事がありました。中途失聴者の松森さんのセミナーがきっかけになっているとは初めて聞きました。
字幕付きCMを放映している企業は、ユニバーサルデザインや情報アクセシビリティに力をいれている企業と考えてもよさそうですね!
なぜなかなか普及しないの?
年々ふえている字幕付きCMですが、まだまだ数は少ない状況です。
TV番組にはほとんど字幕がついているんだから、CMにつけるのなんて簡単にできそうだと思うんですが、いろいろ理由があります。
1. リソースが足りない
字幕付きCMに対応できる製作会社が不足しています。
聴覚障害者がみて分かる字幕は、ただ言っていることをそのまま文字にすればよいわけではありません。
音楽がなっているときは「♪」のマークをつけたり、「(山田)~」のように話している人を載せたりする必要があります。
そうした聴覚障害者のニーズにそって字幕を制作することができる製作会社が少ないのも理由の一つです。
2. ノウハウが共有されてない
CMに字幕をつけるためにはなにをすればよいのかというノウハウが共有されていません。
花王のように字幕CMプロジェクトチームがあればよいですが、大多数はそのようにいきません。
役割分担や、お金のことなど字幕がつくことによるマーケティング効果もまだまだ広まっていないようです。
字幕付きCMはどうやったら見れる?
(日本民間放送連盟資料より引用)
字幕付きCMを見る方法は簡単です!
リモコンの「字幕」ボタンを押しておけば、字幕付きCMが流れると勝手に字幕がついたCMを見ることができます。
と言ってもただ待っていたら、いつ流れてくるか運次第になってしまうので日本民間放送連盟の資料からちょうどいいタイミングを確認するのがよいんじゃないでしょうか。
まとめ
ふと、字幕付きCMが気になって調べてみたら、思いがけずいろいろなことを知ることができました。
聴覚障害者のための情報アクセシビリティ、企業による社会貢献的な視点だけではなく、CMに字幕をつけることによって商品の情報を受け取る人が増えるというマーケティング的な視点が生まれてきているんですね!
今後もふえていくことに期待したいと思います。
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